魔道による暗闇がさあっと晴れていく。
宿泊している部屋の窓から、魔道を維持していた魔道士が、がくりと地面に膝をつくさまが見えた。周りにいた魔道士が回復の魔道をかけている。しかし確かに消耗しているようだが、命が脅かされるほどの消耗でもない。そう見極めて、マティアスは今度、頭上に広がる青空を眺めた。暗闇に隠されるまでに存在していた不自然な黒点、精霊王が操っていた天空要塞は、いまはない。
(自爆したか……)
天空要塞がどういう代物で、精霊王がどういう存在なのか。不本意であるが、マティアスは知っている。知らされている。だからいま、天空要塞とは隔たりのある、この場にいながら、天空要塞においてなにが起こったのか、大体の予測をつけることができた。
窓から離れ、素朴なつくりの寝台に腰かける。
胸に満ちている失望を吐き出すように、マティアスは深々と息を吐いた。どれだけ待っても、この体は変調をきたさない。いつも通りに健やかで、爽快な感覚が隅々にまで満ちている。だからこそ確信できる。
精霊王はまだ存在している。