目次
序

朝食を軽めにしてしまうから、昼食こそがっつり食べたいと思うのだ。
だから今日の日替わり定食を見た時、僕は思わずガッツポーズを決めていた。鶏胸肉を切り開いた中にハムとチーズを詰め込んだ、チキン・コルドン・ブルー。
まさに僕の希望をもりこんだメニューに、食堂のおばちゃんへの感謝がこみあげる。野菜サラダが多くても文句を言う気にはならない。「お代わりは気軽に言いな!」と言ってくれたおばちゃんから盆を受け取り、いつもの席に腰掛ける。開け放たれた窓から、涼やかな風が入り込む。少し前までのうだるような暑さは遠のいた。とても気持ちいい。
こういう時こそ、ゆっくり食事を楽しみたいと考えていたのだけど。
「号外だよ、号外! 勇者パーティーが二十五層をクリアしたってさ!」
窓の外から響く新聞売りの声に、僕の意識はコルドン・ブルーから離れてしまった。
(二十五層か)
二十四層をクリアした時期は先月だったはず。進捗が早いな、と、僕は考えた。