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 さて、ここで僕達の仕事について説明しよう。

 僕達の仕事は、部署名が示す通り、迷宮から発掘される宝箱を管理することだ。冒険者ギルド内外の、ほとんどの人が、そう認識している。

 どうやら古代から存在するらしい迷宮の、現代では失われた技術によって配置されている宝箱を、回収してきた冒険者から受け取り、一定額の報酬を渡す。宝箱の解析を専門家に依頼し、中身を取り出してもらったら、ギルドの財産として管理する。財産となったアイテムを、しかるべき冒険者へ支給する部署だと思われている。

 確かに、それも仕事の一部だ。

 けれど、ここで、ちょっと考えてみて欲しいのだ。人間ではない生き物・魔物が跋扈する、古代から存在しているとされる迷宮に、なぜか宝箱が現存している、その意味を。

 普通に考えれば、魔物の棲家に、人間にとって有用なアイテムが存在するはずがない。人間サイズに調整された宝箱が、大小様々な魔物の棲家に点在するはずがないのだ。

 もっと突き詰めて考えたら、他の事実にも気づくだろう。

 二十年近く、多くの冒険者たちが探索を続けてきた迷宮に、未だ回収されていない宝箱が存在するはずもない、と。宝箱なんてとうに回収され尽くしているはずだし、そもそも迷宮同様、古代から存在しているだろう宝箱があるのなら、その宝箱の耐用年数だってどうなっている、とも。ちょっと考えれば宝箱の存在はおかしいと気付けるはずだ。

 だが現実に、迷宮内に、宝箱は存在し続けている。

 そのカラクリに、僕達の部署は絡むのだ。冒険者ギルドは、冒険者を育成するためのシステムとして、迷宮というダンジョンを利用している。つまり、迷宮には冒険者にとって旨味のある場所でい続けてもらわなければ、冒険者ギルドは困る。

 宝箱とは、数ある旨味のうちのひとつなのだ。報酬をもらえるから、冒険者は迷宮に挑む。だから宝箱は用意され続ける。冒険者に、迷宮へと挑んでもらいたいがために。

 ーーーーそれが、僕達の仕事だ。

 要するに、僕達の部署が、迷宮内に宝箱を設置し続けているわけだ。

 僕達の主な仕事は、冒険者たちが探索する各階層に、宝箱を用意すること。一度回収されても、再び回収されるように、宝箱を再配置すること。中身だって僕達が用意している。武具工房や魔法研究者たちが作り出したサンプルや、貴重な回復薬、伝説級のアイテムだって用意することもある。もちろん「古代文明ゆかりの宝箱」にふさわしく、矯飾きょうしょくした状態だ。

 幾重にも手間をかけているこの仕事を知れば、きっと、ほとんどの人間が奇妙に感じるだろう。少なくとも合理的じゃない。でも迷宮探索が始まって以来、続いてきた仕事だ。

 ともあれ、僕達は、冒険者たちよりも先に迷宮を攻略し、解析している。でなければ、宝箱の再配置などできない。秘密裏に、冒険者ギルドの精鋭たる僕達は、動いている。

 今回、勇者パーティーが他の冒険者たちに先んじて、二十五層まで攻略を進めた。

 その二十五層とは、一年前に、僕達が攻略を終えた階層だ。