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 とにかく報告は済ませた。だったら後は解析を進めるだけだ。

 今回の解析は、ほぼ一年ぶりだから、より慎重に準備を進める。万が一の出来事が発生しないように、たとえ発生したとしても対処できるように打ち合わせを重ねる。

 結果、僕や秘書どののパーティーは初日から三十一層に挑むと決まった。

 他のパーティーは十層から開始する。ちなみに、このように途中の層から攻略を開始できる理由は、普段の僕たちは宝箱を配置するために隠蔽の術式を使っているからだ。

 要するに、十層から解析を開始するパーティーは九層まで隠蔽の術式を使う、三十一層から解析を開始するパーティーは三十層まで隠蔽の術式を使う、という意味である。

 魔物と遭遇しても回避できる隠蔽の術式は、ドラゴンによって授けられた。当然、機密である。<宝箱管理室>に属している間は使えるけれど、離職した場合、退職した場合には使えなくなるよう、これもまた、ドラゴンに授けられた誓約の術式を使っている。

「さて、と」

 そんなわけで隠蔽の術式を使って、僕たちは三十層まで辿り着いた。

 途中、攻略を進めているパーティーと遭遇することはあったが、隠蔽の術式のおかげで気付かれることはなかった。いつもより攻略を進めているパーティーが多い気がする理由には、間違いなく、勇者による二十五層攻略完了が影響しているんだろう。勇者は魔王を倒す存在であって、本職の冒険者じゃない。たまたま修行に都合がいいシステムだから迷宮を活用していた、そんな存在に先を越された事実は、攻略をメインにしている冒険者にしてみれば、悔しくてたまらない事実に違いないのだ。

「これより三十一層の解析を開始する。いいね?」

 僕がそう言えば、メンバーは静かに頷いた。

 三十層の最奥にある転移装置の上に移動した。以前、訪れたときには微動たりとも発動しなかった装置は、今度はきちんと発動してくれた。転移装置がもたらす、なんとも微妙な感覚の揺れを知覚しながら、僕たちは覚えのない場所に移動する。

「へえ」

 誰もが初めて訪れる階層の壁を見て、僕は思わず声を上げていた。

 これまでは石造の壁だった。でも今、目の前に広がっている迷宮の壁は、木造に見えた。ところどころ、松明に似た明かりも灯っている。床も、土ではなく床板が使われている。そのためか、きれいに整えられた建物内にいる感覚になる。本来の迷宮は、古代文明の叡智を保存している場所だと思い出させる、そんな場所だった。