先日、街に出かけたとき、たまたま美術館の近くを通りました。でね、その時に特別展示を催していると知ったのです。明日で終わる展示に興味を抱いて、記憶に留めていました。
だから今日、その美術館へ。ひろしま美術館に行ってきたのですよ。
生誕120年記念 荻須高徳展
正直に言いましょう。わたしは、荻須高徳という画家を知りませんでした。
ではなぜ、今回の特別展示に行ったのかと申しますと、見かけたポスターにある「私のパリ、パリの私」という言葉に惹かれたからです。ええ、わたしはフランスに興味を持っているから、パリの街並を描いた絵画を見てみたいと感じたのですね。
チケットを購入して、いただいたリーフレットによると、荻須高徳は、1927年にフランスに渡り、第二次世界大戦中を除いた、五十年以上という歳月を画家として、パリで過ごした人物です。パリを中心としたヨーロッパの何気ない街角を描いた絵画は、当時から多くの人々に認められ、1956年にはフランス政府からレジオン・ドヌール勲章を授与されています。のちに大統領となるパリ市長のシラク氏は「もっともフランス的な日本人」と荻須氏を評しました。1986年にパリのアトリエで死去。墓はモンマルトル墓地にあります。
今回の特別展示は、生誕120年を記念したもの。ひろしま美術館が所蔵する絵画もありましたが、愛知県の稲沢市荻須記念美術館に所蔵されている絵画を中心に展示されていました。
見たところ、人物画は数えるほどしかありませんでした。自画像と友人のシャルル氏を描いたものだけ。他はほとんど風景画です。パリのレストランや教会、新聞屋さんや床屋さんといった何気ない街並みを描いた絵画が多く展示されていました。
すべての絵画に、ではありませんが、ところどころに、荻須氏が生前に告げた言葉が添えられていました。第二次世界大戦をはさんだ時代を、画家として生きた荻須氏の言葉はひとつひとつがとても印象深いものでした。
わたしが特に惹きつけられた言葉は、……メモを取らなかったからうろ覚えなんですけれど……、「パリではあれやこれや思い描いていたらあっという間に時間が過ぎていく。(中略)大きな夢を描くより一日一日を大切にするほうがいい。その気にならなくても仕事を始めていくうちにアイディアが出てくる」という言葉です。や、繰り返しになりますが、この言葉は正確な引用ではありませんよ! ちょうどね、自分自身の生き方について考えているときでもあったから、大きな理想を追いかけるより一日一日を積み重ねていくほうが大事、という意見がわたしの中にズドンと入ってきたのです。地に足をつけることが大切、と言われたようにも感じました。
ネットで視聴できるNHKアーカイブスには、荻須高徳氏のページがあります。そこには「芸術は生活と離れてはいけない。住んでいるところ生きている生活が大事」という言葉が掲載されています。今日見てきた言葉と相まって、あの時代に生きた荻須氏の生き様が改めて印象深く感じられました。
期間限定の特別メニューをいただきました。

ところで、ひろしま美術館内には、カフェがあります。でね、そのカフェ・ジャルダンではこの特別展示に合わせて、特別メニューを食べられるようになっていました。
ズバリ、「ビーフシチュー」です!
パリのビストロで味わう「牛肉の赤ワイン煮込み(ブフブルギニョン)」をイメージした濃厚なシチューです。ええ、事前に知っていたわたしは、もちろん食べてきましたよ〜。
カフェではフランス語の曲も流れていて、雰囲気を盛り上げていました。だからね、いつもよりかしこまった気持ちで、ビーフシチューを食べたのです。姿勢を正して、丁寧にカトラリーを操ってみたり。
美味しかったなあ。牛肉がトロトロで、黄色いじゃがいもの表面はカリッとしていて。とても濃厚で、しっかりお腹にたまりました。パンも美味しかったのですよ。バターをぬると、それはもう、風味も良くて。お皿に残ったシチューをパンでぬぐって食べてもみました。うん、うっとりものです。ビーフシチュー、お店で食べるなんて何年ぶりかしら? やっぱりパンと一緒に食べると美味しさが引き立つのねえ、って考えてしまったり。やー家で作る時、主食をごはんにしてたから。うん、今度からパンにしようと考えましたよ〜。
わたしはこれまでにフランスに旅行したことがないんですけれど、いつか本場に行きたいなあという欲求を、程よく手軽に(?)満たしてくれるメニューでしたね。食べられてよかったです。
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