二学年の学年主任は、厳しい生活指導で有名だ。
通常、そういう教師は、生徒たちから煙たがれる。
だけれども、彼は数少ない例外だと言えよう。それというのも。
ぴょこ。
(動いてる)
(動いてるよ……)
(今日も動いている)
学年主任の担当科目は化学である。
だからなのか、シャツとパンツの上に白衣をまとい謹厳な様子で授業をしているのだが、その白衣から飛び出た尻尾が今日もぴょこぴょこ揺れているのだ。
この学年主任は、実は化学を愛してやまない教師なのだ。
だからこそ、授業するだけでも嬉しいらしく、その心情がそのまま尻尾に現れているというわけだ。ちなみにこの学園では尻尾のある種族は珍しくない。だからこそ生徒はこの尻尾表現が何を示すのか、皆知っている。
この学年主任は、つまらないと思える授業でも喜んでしまうほど、化学を愛しているのだ、と。
いくら表情が無表情に固まっていても。
いくら声音が冷たく凍っていても。
真実はただひとつ。尻尾がすべてを物語っている。
だからこそ学年主任の授業で眠るものはいない。
なぜなら雑談など交えない、生真面目一辺倒な授業であっても、教師が抱く化学という分野への熱い愛情は伝わってくるからだ。
ぴょこ。
そして、今日も尻尾が動く。
化学の話をできるだけでも嬉しいのだと、謹厳な教師の尻尾が表現豊かに物語る。
だからこそ、なんとなく生徒も集中してしまうのだ。
そうしていつの間にか、「あれ、化学って面白いんじゃね?」という気持ちになっている。
学年主任たる教師だけが知らない。
居眠りをする生徒がいない理由は、よもや自分の持つ化学への情熱と尻尾に由来するものだとは。
026:尻尾▼
(ファンタジー学園もの 先生の尻尾)
ファイナルファンタジー14というゲームを遊んでいるんですけれど、ミコッテ族という猫の種族がいます。その種族のとあるキャラクターの感情表現で、「時々尻尾がのぞいている」という描写があったのですね。その設定に萌えてしまいまして、今日のお題を見つけた途端、スルスルっとこちらのお話を書いておりました。真面目な親父が尻尾生やしているっていいですよね、かわいい。ファイナルファンタジー14はとても面白いオンラインゲームです。おすすめ!
2019/08/27