デジャヴ

はじめて経験する場面なのに、なぜか昔に経験したことがある気がする。
そんなデジャヴが、わたしの人生における奇異を発見するきっかけだった。

目の前に広がる光景は、常識人ならば眉をひそめるしかないだろう光景だ。なにしろ、第二王子殿下が、男爵令嬢を傍に置き、婚約者である公爵令嬢を糾弾しているのだから。

ずらずらと公爵令嬢の罪状を殿下は口にしているけれど、アホか、と、わたしは思った。
王子は確かに王子ではあるけれど、一公爵令嬢の罪状を糾弾する権限は持っていない。実際に公爵令嬢が男爵令嬢をいじめていたというなら、それは犯罪である。摘発すべきは、学生である王子ではなく、教師であるべきだし、もっというなら、学園外部の治安維持組織の人間がふさわしいのではないだろうか。繰り返していうが、いじめは犯罪なのだ。

なのに、現実には王子が人前で糾弾している。
まるで児戯のような糾弾劇だ、と考えたところで、奇妙な感覚を覚えた。

そう、デジャヴを覚えたのだ。

(この光景、はじめてじゃないーーー)

そう思った途端、あざやかな光景が頭によぎった。金髪碧眼の美少女が、王子に糾弾されるスチル。スチル、という単語が弾けるようにさまざまな場面を脳裏によみがえらせ、わたしは気づいた。この光景は、はじめてじゃない。以前にも、という表現は正しいのかわからないけれど、わたしは本日この日、第二王子が公爵令嬢を糾弾する経験を、これまでに何度も繰り返してきた。

そう、乙女ゲームのなかで。

乙女ゲーム、という単語を思いついたわたしは混乱した。あれ、待てよ。これが乙女ゲームというなら、どこからがゲームだ? そう考えて、思わずこれまでの人生を振り返っていた。

わたしは商人の娘で、たまたま魔力が強い突然変異だからこそ、貴族が通う学園にも通う許可が得られた。そう、それがわたしの人生。輝かしき乙女ゲームのモブとして、わたしはこれまでを生きていた。

主人公ではない。悪役令嬢でもない。
ただのモブ。

でも、かつて遊んだ乙女ゲームと現実が限りなく重なっているが故に、わたしは観客の立場でいながら、混乱した。
あれ、このゲーム、これからどうなっていくんだ?

混乱する理由はただひとつ。
遊んだ乙女ゲームには、主人公が二人、存在するからだ。

一人は正統派物語を紡ぐ男爵令嬢。第二王子のそばにいる彼女だ。
もう一人は、下克上的物語を紡ぐ公爵令嬢。糾弾されている悪役令嬢だ。

そう、二つのルートがあるからこそ、わたしはそっと息を飲んだ。
住む国の安寧は主人公がどちらか、という事実に左右されるのだ。

男爵令嬢のルートなら、これからこの国は戦乱の時代を迎える。
公爵令嬢のルートなら、これからこの国は改革の時代を迎える。

さあ、この国の行末はどちらだろう?

 

038:デジャヴ
(ファンタジー 転生もの?)

このごろ婚約破棄系創作が流行っていますね。わたしも大好きです! 現代知識を持っている悪役令嬢が、仕事でのし上がってザマァを実現するところなんて、スカッとするんですもの。とはいうものの、自分で書けるかと言えば、疑問です。小心者だから、どうしても傑作と比べて落ち込んでしまって、少しも書けないような気がする。でもとりあえず、挑戦してみたのでした!

2019/12/20

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