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 妹たちと違って、わたしは食べ物にはこだわらない主義。

 もちろん美味しければうれしいと感じる。滅多にないけど、まずければ哀しいと感じる。
 でも味付けで、食事の摂取量が変わったりしない。美味しいから食べ過ぎちゃう、まずいからもう残しちゃえ。妹たちの反応は多彩だけど、わたしは不思議でしかたない。

 なぜなら食事とは栄養補給なのだ。それも一日三回も機会を与えられる。

 だから活動に必要な量だけ、食料を摂取できれば問題ない。味付けなんてささいな問題だ。わたしの単純な主張は、けれど妹たちに不評。メグもリュシーも溜息つきながら云う。

「一理ありますけど、料理する身には味気ない主張ですわ」
「だのう。心からの、正直な本音だとわかるだけに、いっそう切ない」

 そうして、二人はあわれむような眼差しでわたしを見つめるから、むう、とふくれる。

 どうして妹たちは、そんな反応をするのだろう。

 わたしたち三姉妹は同じ顔をしている。でも見間違える人なんていない。能力が違う、口調が違う、性格が違う。でもいちばんの違いは、こういうときに実感する。同じ顔、同じ色の髪、同じ色の瞳を持ち合わせても、やっぱりわたしたちは違う人間なのだ。

 少しほっとする、でも、ちょっぴりさびしい。

 そんなわたしの気持ちをわかってくれた人は、紫衣の魔道士、キーラ・エーリンだ。

 意外だった。彼女も妹たち同様、食事に情熱を傾ける人なのだ。将来、喫茶店を経営するのだと意気込んでいる、世界最高位の魔道士の一人。魔道士ギルド次期長の指名も受けているというのに、なにもかも蹴っ飛ばして、どかんと自分の夢に邁進している人。

「だって、あたしもそう考えてた時期、あったもの」

 あるとき、なにげなく訊ねたら、けろりとした答えが返ってきた。

「魔道士ギルドで、修行していたころ。あのときは紫衣を取得するだけが目的だったから、食事なんて適当よ。でもじいさまの指導がばしばし入って、いつのまにか、美味しさ重視になっちゃったのよねえ。……あと、どうしても見返したいやつがいるし」

 後半部分で、なぜか、ぐ、とこぶしを握りしめていたキーラは、おとなしく話を聞いているわたしに気づいて、ふっとやわらかく微笑んだ。いつもより大人びた微笑だ。

「だから、いいんじゃない。カールーシャの主義も考えもそのままで。大丈夫よ。いま抱えてる、ちっちゃなさびしさを、打ち消してくれる出会いって、必ず訪れるから」
「? わたしは人間関係ではなく、食べ物の話をしてたんだけど」

 不思議に感じて訊ねれば、「料理を作るのは人間よ」と返された。そういうもの、らしい。

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