ヘレティクの娘 2−2 どうしてくれようあの野郎。 いってらっさい、と、ひどく楽しそうにはずんだ声音で、アンドレアスと自分を送り出したジョン・ナッシュへの報復をあれこれ考えながら、フィンはとりあえずおとなしく、前を歩くアンドレアスに続いた。なにしろ雇用主... 2020.08.27 ヘレティクの娘
ヘレティクの娘 2−1 まだ薄暗い石畳の道を、フィンは懸命に走っていた。 前夜の疲れが出たのか、少しばかり寝坊したのだ。ちいさな寝坊だったはずが、朝ごはんを一日の基本と考える兄に引き止められたために、結構な遅れになっている。それでも貸本屋の開店には間... 2020.08.19 ヘレティクの娘
ヘレティクの娘 1−5 時間は少しさかのぼり、フィンとレイモンドが交霊会に参加していた、ちょうどそのころ。 帝都カーマインの中心にある皇宮において、エクレーシア帝国でもっとも多忙とされる人物が、バルコニーに進み出ていた。 皇太子エドガー・アーヴィ... 2020.08.19 ヘレティクの娘
ヘレティクの娘 1−4 「察するに、あの霊媒師の女性は、南大陸の移民ですね。ひとことも話さなかった理由も、それで納得できます」 なにごともなく交霊会を終えたあと、なじみのパブに落ち着くなり、レイモンドはビールグラスを片手につぶやいた。 フィンは... 2020.08.19 ヘレティクの娘
ヘレティクの娘 1−3 エクレーシア帝国において、夏は駆け足で過ぎていく。 だからフィンが仕事を終え、「ジョン・ナッシュ貸本屋」を出たときには、外はすっかり夜になっていた。街頭に立つ白熱ガス灯が、黄色っぽくあたりを照らしている。こほ、と、ちいさく咳を... 2020.08.19 ヘレティクの娘