ヘレティクの娘

ヘレティクの娘

2−2

 どうしてくれようあの野郎。  いってらっさい、と、ひどく楽しそうにはずんだ声音で、アンドレアスと自分を送り出したジョン・ナッシュへの報復をあれこれ考えながら、フィンはとりあえずおとなしく、前を歩くアンドレアスに続いた。なにしろ雇用主...
ヘレティクの娘

2−1

 まだ薄暗い石畳の道を、フィンは懸命に走っていた。  前夜の疲れが出たのか、少しばかり寝坊したのだ。ちいさな寝坊だったはずが、朝ごはんを一日の基本と考える兄に引き止められたために、結構な遅れになっている。それでも貸本屋の開店には間...
ヘレティクの娘

1−5

 時間は少しさかのぼり、フィンとレイモンドが交霊会に参加していた、ちょうどそのころ。  帝都カーマインの中心にある皇宮において、エクレーシア帝国でもっとも多忙とされる人物が、バルコニーに進み出ていた。  皇太子エドガー・アーヴィ...
ヘレティクの娘

1−4

「察するに、あの霊媒師の女性は、南大陸の移民ですね。ひとことも話さなかった理由も、それで納得できます」  なにごともなく交霊会を終えたあと、なじみのパブに落ち着くなり、レイモンドはビールグラスを片手につぶやいた。  フィンは...
ヘレティクの娘

1−3

 エクレーシア帝国において、夏は駆け足で過ぎていく。  だからフィンが仕事を終え、「ジョン・ナッシュ貸本屋」を出たときには、外はすっかり夜になっていた。街頭に立つ白熱ガス灯が、黄色っぽくあたりを照らしている。こほ、と、ちいさく咳を...
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