ヘレティクの娘

ヘレティクの娘

1−2

 約三十年前、ひとつの醜聞がエクレーシア皇室を襲った。  優秀と評判だった皇太子が、若き未亡人と恋に落ちたのだ。  上流階級の人間はおろか、路地裏に住む浮浪児にまで、その醜聞は広まった。良識のある人々は眉をしかめ、そうでない人々は思...
ヘレティクの娘

1−1

 面白い本を探しているんですけど、と相談されたフィン・ターナーは濃藍色の瞳をぱちぱちとまたたかせた。 「そうですねえ」と応えながら、同時に、質問してきた相手を観察する。  年のころは十四、五。林檎のように赤い頬とくりっとした...
ヘレティクの娘

引用

皇太子殿下の指示によって男爵夫妻が連行されたのち、呆然としていたわたしが、ふと気づけば、アンドレアスはカウェン公爵家の居間から姿を消していた。 そういえば、アンドレアスは謎解きの最中から、様子がおかしかった、と気づく。 どこが、...
ヘレティクの娘

「いまが中世の時代ではない事実を感謝するべきでしょうか」 この日。 心配してずっと探し続けたお嬢さまは、よりにもよって強い雨が降り続けるなか、はずれにある墓地にいた。他に人はおらず、また、傘もさしてないからずぶぬれ状態だとい...
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