ヘレティクの娘

ヘレティクの娘

3−2

 アンドレアスはフィンを、新しい助手だ、と、ベインズ夫人に紹介した。  つまり、元アシュバートン男爵令嬢である、と、ベインズ夫人は知らないのだ。だからおそらく、フィンをアンドレアスの助手になるために男装している娘、と捉えている。当然、...
ヘレティクの娘

3−1

 ふう、とため息がこぼれてから、フィンはあわてて唇を手で抑えた。  気鬱がそのまま現れたようなため息は、一人の時ならばまだいい。だがこの場には他に人がいるのだ。そろりと視線を動かせば、美しいひとが苦笑を浮かべた。薄紅色の唇が動く。 ...
ヘレティクの娘

2−4

 ジョン・ナッシュ・アクトンにとって、貸本屋はあくまでも副業だ。  趣味で集めていた書籍で仕事ができないかと考え、思いついた副業は想定以上の儲けを弾き出してくれた。今では、本業に勤しむだけでは知り合えないだろう階級の客まで、貸本屋の常...
ヘレティクの娘

2−3

 不透明な人だな、と、青年ルイスを見て、フィンは思った。  昨夜、キャシーが告げた、明るく誠実そうな人とはおそらくこのルイスのことなんだろうと想像がついた。看板娘の眼力は侮れない。本来なら、そういう人物なんだろうとフィンは思った。 ...
ヘレティクの娘

2−2

 どうしてくれようあの野郎。  いってらっさい、と、ひどく楽しそうにはずんだ声音で、アンドレアスと自分を送り出したジョン・ナッシュへの報復をあれこれ考えながら、フィンはとりあえずおとなしく、前を歩くアンドレアスに続いた。なにしろ雇用主...
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