ヘレティクの娘

ヘレティクの娘

2−4

 ジョン・ナッシュ・アクトンにとって、貸本屋はあくまでも副業だ。  趣味で集めていた書籍で仕事ができないかと考え、思いついた副業は想定以上の儲けを弾き出してくれた。今では、本業に勤しむだけでは知り合えないだろう階級の客まで、貸本屋の常...
ヘレティクの娘

2−3

 不透明な人だな、と、青年ルイスを見て、フィンは思った。  昨夜、キャシーが告げた、明るく誠実そうな人とはおそらくこのルイスのことなんだろうと想像がついた。看板娘の眼力は侮れない。本来なら、そういう人物なんだろうとフィンは思った。 ...
ヘレティクの娘

2−2

 どうしてくれようあの野郎。  いってらっさい、と、ひどく楽しそうにはずんだ声音で、アンドレアスと自分を送り出したジョン・ナッシュへの報復をあれこれ考えながら、フィンはとりあえずおとなしく、前を歩くアンドレアスに続いた。なにしろ雇用主...
ヘレティクの娘

2−1

 まだ薄暗い石畳の道を、フィンは懸命に走っていた。  前夜の疲れが出たのか、少しばかり寝坊したのだ。ちいさな寝坊だったはずが、朝ごはんを一日の基本と考える兄に引き止められたために、結構な遅れになっている。それでも貸本屋の開店には間に合...
2021.03.16
ヘレティクの娘

1−5

 時間は少しさかのぼり、フィンとレイモンドが交霊会に参加していた、ちょうどそのころ。  帝都カーマインの中心にある皇宮において、エクレーシア帝国でもっとも多忙とされる人物が、バルコニーに進み出ていた。  皇太子エドガー・アーヴィ...
タイトルとURLをコピーしました