宝箱集配人は忙しい。– category –
-
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
33 「愚妹が迷惑をおかけしました」 秘書どのは公私をきっちり分けるタイプだ。だから本日の業務をすべて終わらせてから、そう言って頭を下げた。いま、この場には僕と秘書どの以外はいない。ただ、ほかのメンバーが退勤間際に見せた、心配そうな表情を... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
32 当たり前なんだけど、太陽の光はこんな場所にも差し込むんだなあ、と僕は考えた。 こんな場所、すなわち牢だ。どうしてそんな場所にいるかと言えば、王女さまの侍女が激高して、僕を捕らえさせたからである。 客として迎えた僕に対しての捕獲命令... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
31 正直に言ってしまってもいいだろうか。んなこと、知るもんか、と。 だって、そうだろう。確かに僕は勇者と会話をする。けれど、彼の事情に踏み入れるような会話を交わしたことはない。いつだって、迷宮探索に関わる内容だ。彼が好ましく感じている... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
30 人間の器って、自分の間違いに気づいた時に現れるもんだ、と僕は考えている。 だからこのとき、王女さまがどういう行動に現れるのか、興味深く捉えていたんだ。少々下世話な好奇心だけど、王女さまの勘違いに振り回された身には、このくらいの好奇... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
29 一国の王女さまが冒険者ギルドの一職員である僕を追跡させる。目的も動機も不明なままだけど、秘書どのがこの件を引き受けてくれたんだ、問題はないと考えてた。 考えていたんだけどね、それは少々、甘かったみたいだ。 僕は今、なぜだか王宮の一... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
28 姿を見せた騎士たちは、秘書どのに向けて膝をついた。 それに対して、秘書どのがゆったりと腕を組む。脇からちらりと見上げれば、冷ややかな眼差しを騎士たちに向けていて、おお王族っぽいなあと僕は考えていた。 すっかり他人事の意識でいる理由... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
27 素直に言ってしまおう。秘書どのとの夕食は、楽しかった。 偏った会話になるかと思いきや、そんなことはなく、僕はこれまで知らなかった王宮の事情までも知った。王宮には王族と賓客の料理を用意する第一料理人と、王宮勤めの騎士や文官たちの料理... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
26 ところで秘書どのは元王太子なのである。王族なのだ。 だから市井には詳しくないだろうと考えていた。なので、いつもの酒場に行こうかなあと僕は考えたんだけど、秘書どのがぜひにと言って自分のなじみに連れて行ってくれた。 ちょっとした、隠れ... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
25 「室長」 秘書どのの呼びかけを受けて、僕はパチリと目を開けた。 いつの間にか、僕は眠っていたらしい。そんなに長い時間ではないと思ったんだけど、窓の外はすっかり暗闇に沈んでいた。身体をおおっていた術式は消えている。 おそるおそる身体...
