あなたのマリナーラ– category –
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あなたのマリナーラ
あなたのマリナーラ (16)
【(16)】 せっかくだからコンモツィオーネで食事したかった、とは、店を出て歩き出したディーノの言葉だ。そう云われて初めて、もう、お昼の時間になっていると気づく。お腹の空き具合にも気づいたわたしは、にんまり笑顔を浮かべてディーノを見あげた... -
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あなたのマリナーラ (15)
【(15)】 「やあやあやあ、ようやく我が店にも来てくれたのだね!」 半ば予想していた反応だけど、いざ、目にすると、居たたまれなくなる反応だ。 なんと云ったらいいのだろう、くるりと踵を返して帰りたくなる。腕を全開に広げてこちらを向いてい... -
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あなたのマリナーラ (14)
【(14)】 ピッツァフェスト出場者の募集は、結局、七名、集まった段階で締め切られた。 それなりに名の知られているピッツァイオーロが集まっている。その七名にラウロがいる事実を、なんとなく、誇らしく感じた。出場資格のひとつに、ピッツァイ... -
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あなたのマリナーラ (13)
【(13)】 さて厄介な仕事がひと区切りついたからと云って、それでわたしたちの仕事がなくなるわけがない。キーラは気がかりだけど、これ以上出来ることはない。放っておくしかないから放っておくこととしよう。 だからいつものように、翌朝、わた... -
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あなたのマリナーラ (12)
【(12)】 「どうやらアドリアーノさんは施療院に入られたようですの」 屋台で夕食を食べた帰り道、メグが教えてくれた事実がある。飛び出したわたしとわたしを探しに行ったラウロを待っている間に、妹たちはリーチャと仲良しになったらしい。いった... -
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あなたのマリナーラ (11)
【(11)】 ところでわたしは、夕食を食べるために八区に向かったのだった。 おまけに夢中になって走り抜けたから、いま、お腹の音がすごい状態になっている。 ぐーぐるるるーぎゅっぎゅっぎゅーう。 (どんな時でもお腹は空くのね……) 人類とし... -
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あなたのマリナーラ (10)
【(10)】 しばらく硬直していたわたしは、うん、とひとつ頷いて踵を返そうとした。 飲食業は体力仕事だ。だからたまにはお休みしたいときもあるのだろう。ならば帰宅するしかないと考えたのだけど、メグとリュシーはあわててそんなわたしを引き留め... -
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あなたのマリナーラ (09)
【(9)】 ところがそれから二週間経っても、わたしはラウロの店には行けなかったのだ。 理由は、マーネに厄介な客人が訪れたからだ。十年前より鎖国しているルークス王国、その王太子アレクセイが紫衣の魔道士キーラ・エーリンに仕事を依頼するため... -
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あなたのマリナーラ (08)
【(8)】 なにしろ格好がすごい。紫色の下衣と薄紅色の上衣をあわせ、きらきらした金細工の飾りがあちこちについている。手入れの行き届いた金髪をふぁさっとかきあげた。わたしの感性で云うと、笑うしかない存在なのだけど、男はわたしの反応なんてお...