24時間、料理の注文承ります。【WEB版】– category –
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24時間、料理の注文承ります。【WEB版】
日常、あるいは非日常にある彼はひそやかに企む。
「それではこちらの書類にサインをお願いします」「ああ」 まったく次から次へと仕事がわいてくる。 わたしはうんざりとした様子を隠さずに、執事が持ってきた書類に目を通した。伯爵と云う地位は、便宜上、与えられたものではあるけれど、その職務に違い... -
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4・動揺しない人っていかがなものか。
(……あれ) アヴァロンの居住部に入ったわたしは、微妙な違和感を覚えた。なんだろう、この感じ。右、左と見まわしたけれど、さっぱりわからない。アイボリーに茶色の小花が散った壁紙に、素朴な印象のタペストリー。チェストの上には飾り皿が3枚。出かけ... -
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3・めばえた謎、ほどける謎
じりり。再び玄関のチャイムが響く。わたしはベッドの中でぼんやりその音を聞いていた。時計を引き寄せて、時刻を確認する。午前6時。まだ早い。そう結論付けて、再び掛け布の中に潜り込む。けれど。じりり。がばりと起き上がった。もう、誰が来たんだ。... -
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彼は穏やかに笑って喪失を受け入れた。いつものように。
建物の外に出れば、ひんやりと心地よい風が髪を揺らした。空を見上げれば、満ちた月と星が煌めく。 (よい夜だ) 唇がたわいなくほころび、充足した吐息がこぼれた。 腹は心地よく満ちている。ならば一杯、飲むことにするか、と、わたしはゆっくりと歩き出... -
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2・真夜中の訪問者はしゃべる猫でした。
ぽたぽたと髪先から落ちてくるしずくを、リュックサックから取り出したタオルで丁寧に拭った。夕食を近所のパブで済ませ、入浴を済ませたところなのだ。うっすらとかいていた汗と埃が流れて、肌はずっとさわやかな感触になっている。ようやく人心地つけた... -
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1・祖母のレストラン「アヴァロン」
けたたましいクラクションの音に、はっと硬直した。慌てて視線を向ければ、渡ろうとしていた信号は早くも赤信号に変わっている。いけない、いけない。つい、手の中の帳面に夢中になっていたみたいだ。帳面を閉じて、せこせこと信号を渡り終える。通り過ぎ... -
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彼は開店を待ち続けている。あるいは、彼女を。
(まだ、開いていない) 店の前まで歩み寄って、どことなく気落ちする心地で呟いた。慣れない格好をして訪れたと云うのに、この料理店は相変わらず固く扉を閉めたままだ。このわたしに、幾度となく足を運ばせるとは何事だ。そう云ってやりたい気持ちは、閉...
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