国盗物語– category –
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国盗物語
権利を主張できる資格は、とうにない。 (10)
右手が熱い。いちばんはじめに、そう感じた。 けれどその熱が、まだ鈍くなっていた感覚を引き寄せていく、よすがになってくれた。キーラはゆっくりまばたいて、視界を取り戻した事実に気づいた。視覚だけではなく、聴覚触覚も取り戻している。そ... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (9)
あたりまえのように認識していた、すべての感覚が遠ざかっていく。 触覚も聴覚も視覚も力任せに奪われ、失われていく感触をどう表現したらいいのか。 キーラは間違いなくここにいる。存在している。心は存在し続けている。 だが容赦なく、キ... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (8)
すでに里長は息をしていない。ひとめですぐに分かった。 それでも駆け寄ろうとしたメグを押しとどめて、キーラは鋭く扉向こうの部屋を見た。 他の部屋と同じ、金属製の部屋だが、なにかがあるはずだ。意識体には直接、人間を殺害できない... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (7)
バオをなんとか大人しくさせて、扉をおおう結界を解かなければならない。それもいま、暗闇のなかで行われているだろう、式典が終わるまでにだ。多少手荒な手も使ってでも、と考えれば、ロジオンは鋭く云い放った。 「アレクセイ殿下は元凶である魔道士た... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (6)
構成された魔道が拡散されていく。一瞬だけの浮遊感覚が抜け切れない瞬間だった。 「、キーラっ!」 メグからの警告に、先に身体が動いていた。大気の力を集め、こちらにやってくる魔道へとぶつける。音もなく、だが、衝撃は残して、魔道... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (5)
(ロズリーヌ王女、ありがとうございます) 心の底から、しみじみと頭が下がる。メグを連れていくために、どういう言葉で説得しようかと躊躇した次の瞬間、怒濤の論理展開でマリアンヌ王女を説得してくれたのだ。柔らかな物腰の王女さまだと甘く見... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (4)
「魔道士ギルドのルークス支部長に、マーネの守護者たちか」 低く艶めいた男の声が、執務室に響いた。初めて聞く声だ、と気づいたキーラが視線を向けると、長い金茶色の髪をひとつにまとめた男が腕を組んでこちらを眺めていた。 威風堂々... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (3)
(天空要塞に乗り込め、か) 王宮に到着した馬車から降りながら、キーラは身体をねじって天空を振り仰いだ。 ハナビが展開されている暗闇に遮られて、本来あるべき青空、浮かんでいるだろう天空要塞はまるで見えない。だから天空要塞が浮か... -
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権利を主張できる資格は、とうにない。 (2)
緊急事態だと悟られないためか、馬車は落ち着いた速度で走り続けている。そっと窓から外を眺めれば、街のひとびとの表情が明るくなっていると確認できた。けれど、これからの対応によっては、たちまち曇るかもしれない。あるいは恐怖にひきつるかもしれ...