国盗物語– category –
-
国盗物語
急になにもかもは変わらないようです。
そもそも非常事態だからといって、空腹を我慢し過ぎた判断がまずかったのだ。 きゅるきゅる、とお腹が軽い音を立てた。思わず赤面した。すぐそばにいるひとに聞こえただろうか、と思えば、羞恥のあまり、動き出すこともできない。ちいさな間を置... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (6)
森の入り口、馬を止めたところまでゆっくりと歩いてきたが、結局、マティアスが追いついてくることはなかった。意識体の前から立ち去る際、ちらりと確認したときには、片膝を立てた状態で座り込んで動き出さないままだったから、絶望なりなんなりしたの... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (5)
幻聴だと、まず考えた。 幻聴とは形を変えた自分の声だ。あの子に許してほしいと願っている自分の一部分が、あの子の声を借りて応えたのだと考えた。 けれどなぜか、マティアスが身動いた。キーラに背中を向けて、進んでいた先へと向き... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (4)
ようやくたどり着いた国境地帯、うっそうとした森の入口に馬を止めた。 首筋を撫でてやれば、よくしつけられている馬は、キーラに鼻先を摺り寄せる。待っててね、と、小さくささやいて、マティアスと共に森に進んだ。 まだ陽が明るいときに着いたが... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (3)
天空要塞自爆後、キーラが倒れていた場所は、王都サルワーティオーから馬で半日ほど走らせたところだった。王宮の様子も魔道ギルドの様子も知らされず、ただそれだけを教えられ、キーラはもどかしく感じながら、あちこち身体の動きを確認した。 ... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (2)
「ご挨拶だな。わざわざ迎えにやってきた人間に、開口一番、告げる言葉がそれか」 太陽の光が背後からマティアスを照らし、彼の表情をあらわにさせない。 やれやれ。まだ、どこかだるいような感触のある身体を動かし、キーラは上半身を起こした... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (1)
遠く遠く。なぜかどうしようもなく懐かしい声が、キーラの名前をくりかえしていた。 なにも考えられない、ぼうっとした状態のまま、キーラは声が響く方向に歩こうとする。でも近づけない。あたりまえだ、なぜなら身体はまったく動かないのだから... -
国盗物語
権利を主張できる資格は、とうにない。 (12)
魔道による暗闇がさあっと晴れていく。 宿泊している部屋の窓から、魔道を維持していた魔道士が、がくりと地面に膝をつくさまが見えた。周りにいた魔道士が回復の魔道をかけている。しかし確かに消耗しているようだが、命が脅かされるほどの消耗... -
国盗物語
権利を主張できる資格は、とうにない。 (11)
「大丈夫よ」 動揺する二人を安心させるために、出来れば笑顔を向けたかったが、表示板における攻防が激しくなってきたため、かろうじて動く口で安心させるしかなかった。 「二人とも、あたしが諦めの悪い人間だと知ってるでしょう」 ...