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「24時間、料理の注文を承ります。」

公開している創作を大幅に書き直して、2022年11月、文芸社より発行していただきました。

現在、発売中です。

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宝箱集配人は忙しい。

目次

16

 さて、迷宮の解析を開始するならば、上の人間に報告しなければならない。

 ギルド長と副ギルド長だ。

 僕たち<宝箱管理室>は裁量を認められている。けれど報告、連絡、相談は大切だ。攻略を始めるなら、通常業務を最低人数で回すことになる。フォローは必須なのだから。

 だから僕は出勤するなり、ギルドの内庭に向かった。

 季節は秋に移り変わっている。そろそろ落ち葉の季節だ。だからこまめな掃除が必須の庭に、ギルド長はいた。声をかけようとして、ためらった。

 一人ではなかったのだ。

 まだ若い、ランクも低いだろう冒険者と一緒だった。

 ギルド長には悪癖がある。正体を隠して、一庭師のように振る舞うのだ。ただの庭師として冒険者たちを見守っている。意外にもギルド長だと気づく者は少ない。おそらく今もきっと、あの冒険者は目の前にいる老年の庭師がギルド長とは気づいていないだろう。

 だったら、ちょっと時間を置くか。

 僕はそう判断を下して、踵を返した。

 そのままギルド長室に向かう。ノックをすれば、応えがあったから扉を開ける。副ギルド長がすでに机について、書類仕事をこなしていた。「おや」と意外そうにつぶやく。

「珍しいですね、きみがここに来るとは。ギルド長ならいませんよ。内庭です」
「わかっています。一人ではなかったから、先にこちらに参りました」

 そう答えると、副ギルド長はため息をついた。

「あの人はまた……。いいでしょう、先にお話をうかがいます」

 そうして僕は、今回、三十一層の解析を開始する予定であると報告した。

 ドラゴンに封印解除を依頼した事実を伝え、決定したメンバー編成を口頭にて知らせたところ、副ギルド長はトレードマークのメガネを正しながら、軽く頷いた。

「了解しました。三十五層の解析終了まで、<宝箱管理室>の通常業務へのフォローは任されましょう。人員の補充は必要ですか」
「不要です。三班を編成し、交替で解析を進めていきます。一班が解析を進め残り二班で通常業務を行いますが、問題ないと試算できています」

 すると副ギルド長は苦笑を浮かべた。

「その見込みは少々甘いですね。ユーインとラナを派遣します。役立てなさい」

 ギルド長の秘書たちの名前を挙げられて、僕は軽く頬をかいた。

「……よろしいんですか。そちらの負担が増える気がしますが」
「ギルド長に、いつもの倍、仕事をさせればいいのです。大丈夫ですよ」

 微笑んでいる副ギルド長をみて、まずったかなあ、と考えた。十中八九、副ギルド長は、現在進行形で悪癖を発揮し、余計なお節介をしているだろうギルド長に怒っている。

 もともと副ギルド長は、ギルド長の悪癖をよく思っていないのだ。なぜよく思っていないのか、その理由までは知らないが、事あるごとにギルド長をいさめている。

 ギルド長の悪癖、僕は面白いと感じるんだけどね。組織の長が正体を隠して、新人冒険者たちを見守るあたり、伝説の御隠居、ミィト・コモーンを思い出すじゃないか。

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