宝箱集配人は忙しい。– category –
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宝箱集配人は忙しい。
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56 秋の夜は、暮れるのが早い。 だからなのか、すれ違う人々も、ちょっとばかり早足だ。少し肌寒くなってきたなとも思いながら、僕も足早に、貴公子が滞在している宿屋に向かう。 「あら、室長さん」 宿屋に到着すると、ちょうど外の灯りを調整しよ... -
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55 「これからどう動くつもりじゃ?」 今度こそ副ギルド長が沈黙すると、代わりにギルド長が口を開いた。 僕はほほ笑んだ。 「とりあえず、お世話になった友人にはお礼をするものでしょう。これから夕食に誘うつもりです。探りの気配に敏感そうな相手... -
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54 さて、滞りなく今日の業務は終わった。 僕はいそいそと職場を出た。部下たちが「おつかれさまでした」と見送ってくれる。「残業しないようにね」と僕は言い残しておいた。まあ、秘書どのがまだ残るようだし、あとは任せても大丈夫だろう。 そうし... -
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53 ふう、と、息を吐く。 なにげなく扉を開ければいいんだ。いつも通りに振る舞えばいいんだ、と言い聞かせてから扉を叩く。そのまま扉を開けると、いつも通りの光景が広がっていた。 すなわち、部下たちが事務作業をしている光景だ。 「室長!」「... -
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52 「おや、室長さん」 たどり着いた食堂には、もうほとんど人はいなかった。 さっき、鐘が十四個鳴っていたんだ。食堂のおばちゃんは、いつもの注文口ではなく、がらんとしている食堂のテーブルを拭いていた。 やばい、と思ったね。もしかしたらも... -
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51 ギルド長が本気で、その言葉を言ったわけではないとわかっていた。 でも僕は、この提案をひどく魅力的に感じてしまったんだ。貴公子が充分過ぎるほど有能な人だと知っている。ドラゴンも、創造主に会いたいだろう。 なにより、古代の叡智が眠る迷... -
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50 綺麗に刈り込まれた植木が、がさりがさりと動いて、ギルド長が顔を出した。 「遠慮していたわけではないのじゃよ。空気を読んで隠れておっただけなのじゃよ」 何を堂々と言っているかな、この人は。 今日も今日とて、庭師に扮しているギルド長を... -
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49 ところで僕は、もう限界だったのだ。 くぅるうる、と緊張感に乏しい腹が、ドラゴンと秘書どのの前で主張を始めた。ドラゴンと秘書どのの視線を受けた僕は、お腹を抑えてため息をついた。 この状況、何度目だ。 僕の記憶を奪っただろう貴公子に... -
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48 落ち着け、と、僕は自分に言い聞かせた。 貴公子への違和感を本人にぶつけたとしても、得られるものはないだろう。短い付き合いでも、そんなに簡単な人ではないと察している。何事かを秘匿しているなら、その秘匿している気配ごと隠し通せる、そん...