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「24時間、料理の注文を承ります。」

公開している創作を大幅に書き直して、2022年11月、文芸社より発行していただきました。

現在、発売中です。

試し読み

宝箱集配人は忙しい。

目次

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 結論から言えば、僕の提案は却下された。

 なぜならレヴァナントには僕たち以外の冒険者に姿を見せるつもりはなく、攻略に訪れた相手には、レヴァナントの分身をぶつけるつもりだと言われてしまったからだ。加えて、レヴァナントが用いた肉体修復の術式は、最高ランクの術式に該当するらしく、今の段階で迷宮の外に広めることを許可できない、というわけだ。

 まあ、確かに。あの術式は、今の時代には強力すぎると理解できてたよ。

 でもだからこそ、僕はますます古代文明の叡智を解放すべきだと強く感じた。迷宮の最下層が何層になるのか、僕たちは知らない。まだその段階に至っていない。それでも迷宮を攻略し、古代文明の叡智を受け継ぐ何者かを育てるべきだと、強く感じたんだ。

 僕たちはレヴァナントとの戦闘を終えたあと、今日の解析を終了することにした。

 隠蔽の術式を使って迷宮出口まで戻ってきた僕たちは、今回解析した情報を次の攻略班に引き継ぐ作業を進めた。もっとも僕は、秘書どのに強く言われて医務室に向かった。全身を強く打ったことへの痛みが、このころになって出てきていたんだ。常駐医は僕の様子に呆れながらも、治療の術式をかけてくれた。ひんやりとした術式におおわれて、僕は今、医務室のベッドに横になっている状態だ。

 全身は痛い。でももどかしいような、焦るような気持ちのほうがつらい。古代文明の叡智に触れるたびに感じるこの気持ちは、毎度ながら、無力感をつれてくる。

 早く、後継となる人が現れないかなあ。

 そうしたらドラゴンも心安らかに、自分の時間を過ごすことができるだろう。僕たち<宝箱管理室>は解散することになるだろうけれど、それはそれで悪くないと思えるんだ。

 もっとも、これまでの攻略に二十年かかった。

 二十年かかって二十五層まで攻略が進んだ状態は、この先二十年かけることで同程度の攻略が進むだろうという予測をさせる。現実的に考えて、僕が現役でいられるうちに攻略が完了して、ドラゴンが望む存在が現れる可能性はとても低い。

 僕は夢を見る。

 ドラゴンが待ち望んだ存在が、それでも必ず現れてくれることを。あのドラゴンが重責から解放され、古代文明の叡智を受け継いでくれる存在があらわれる、そのときを。

 僕は、願ってるんだ。

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