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「24時間、料理の注文を承ります。」

公開している創作を大幅に書き直して、2022年11月、文芸社より発行していただきました。

現在、発売中です。

試し読み

宝箱集配人は忙しい。

目次

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 医師の指が僕の頭を辿る。先ほども受けた診察だ。指先にまとわり付かせた魔法が、僕の体内を探り、異常を探す。僕は瞼を閉じて大人しくしていた。ふう、と空気が揺れる音がしたから、目を開ける。同時に、医師の指が僕から離れた。

「先生?」
「異常はない」

 秘書どのの問いかけに、医師は答えた。その答えに、秘書どのの眼差しが鋭くなった。

「そんなはずはないでしょう。事実、室長は不調を感じて、」

 僕は慌てて秘書どのを呼んだ。

 渋々といった様子で秘書どのは口を閉じる。僕は医師を見直した。

「少なくとも、医師先生から僕の体に異常は見当たらないんですね?」
「ああ。きみの体調を損なうほどの損傷は存在しない。もっともわたしが習得している診察魔法も完璧じゃない。わたしの能力では探り出せない損傷があるかもしれないが……」
「いえ、充分ですよ。ありがとうございます」

 僕がそう言えば、医師は笑って立ち上がった。「では保健室に戻らせてもらう」と言って立ち去るかと思いきや、ふっと僕を振り返り「しばらく禁酒したまえ。若いからといって健康を過信するものではないよ」などとからかいの調子で言う。

 思わず眉を下げてしまった僕を笑って、今度こそ医師は応接室を立ち去る。秘書どのが眉をひそめて、僕をのぞき込んできた。気を取り直した僕は、秘書どのを見上げた。

「<彼女>に会いに行ってくるよ」

 僕が誰に会いに行こうとしているのか、すぐに気づいた秘書どのは軽く息を呑んだ。

「機密情報を漏らした症状は出ていませんよ?」
「うん、でも僕の身に起きた出来事はあまりにも不可解だ。できる限り、原因を探っておきたいのさ。……自分ごとだからといって大袈裟に騒ぎすぎていると思うかい」

 僕が問い掛ければ、秘書どのは苦笑を浮かべて、「いいえ」と首を振る。

「あなたが必要だと感じたなら、必要なのでしょう。ただし、わたしも付き添いますよ」
「それこそ大袈裟じゃないかな」

 今度は僕が苦笑を浮かべた。すると秘書どのは顔を引き締める。「なんとでもおっしゃってください」と応える声音は軽いのに、眼差しだけはやけに真剣だ。

「あなたから目を離して後悔するなんて、一度で充分ですから」

 僕は口を開いて、何かを言おうと思ったんだけど、何も言わないまま、口を閉じた。

(困ったな)

 僕は天涯孤独だ。一人でいる時間が長い。

 だからこそ他人から、親身になって心配されることに慣れていないのだ。

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