365のお題– category –
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365のお題
変。
「変なのです」 僕の執務室に飛び込んできた義妹は、開口一番、そう言った。 いつもならば「知ったことか」と追い返すところだけど、ちょうど昼食を終えたばかりの時間だった。執務に戻っていたものの、どこかまったりとした気分を切り替えたくて、僕は書... -
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デジャヴ
はじめて経験する場面なのに、なぜか昔に経験したことがある気がする。そんなデジャヴが、わたしの人生における奇異を発見するきっかけだった。 目の前に広がる光景は、常識人ならば眉をひそめるしかないだろう光景だ。なにしろ、第二王子殿下が、男爵令嬢... -
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テレビジョン
テレビって必要かな? 唐突にそんなことを思った。いつものように深夜遅くに帰宅して、コンビニ弁当を温めている間、ふっと唐突に。 いわゆる社畜のわたし。家にいても、ほとんどテレビを見ることもない。テレビはいつも、黒く沈黙している。 (必要かな?... -
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ドラッグ
思いがけず手に入ったものを手に持ち、ふふっと笑ってしまった。 「いいモノがあるんだけどな?」 ボソリと明るく告げてみたところ、相手はピクリと反応したから笑い出したくなってしまう。ふだん、理性的に振る舞っていても、生き物である以上、勝てない... -
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メトロポリス
(ふざけるな、クソじじいーーー!!) 心の中の絶叫は、口の中に封じ込めてやった。さすが自分。ナイスな状況判断だと思う。 なぜ封じたのかと言えば、そりゃ独りぽっちなのに、街のど真ん中で絶叫するのはさすがに注目を集めると考えたから。 さすが自分... -
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電話
嘘つき。 力なく溢れた言葉は、涙を伴っていた。騒ぎ立てる感情は、さまざまな言葉を形にしたがる。でも形になった言葉はたったこれだけだ。嘘つき。嘘つき。嘘つき。子供の癇癪のように、壊れた機械のように同じ言葉を繰り返していたら、滑稽さが目につい... -
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欠片
「そう。例えるならば、これは欠片だ」 魔法使いがそう言いながら、くるりと水晶に見えるものを指先で回した。水晶に似た何かは、けれども中心に微かな炎を宿している。 「欠片?」「そう。はるかなる太古、本当の魔道使いたちが使用していた魔道具のかけ... -
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NO TITLE
(--------------あ) 入社式の時、同期の中に懐かしい人を見つけた。高校時代に付き合っていた彼だ。大学は別の大学に通ったから、まさかここで同じ会社になるとは思わなかった。 何年ぶりに会うんだろ。高校時代の雰囲気はそのままに、でもどこか精悍に... -
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私の名前
お試しで付き合ってくれませんか、好きになってくれるまでなんて言いませんから。 彼との始まりは、そんな言葉で始まった。我ながらバカだなあって思う。なんでそんな言葉を告白の言葉に選んだ、って自分でも思った。 でも正直なところ、他の言葉が思い浮...