廃園遊戯– category –
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廃園遊戯
滲んだインク
髪をすいていく感触は、こんなときでも心地よかった。アルテミシアの髪質は少し厄介で、洗ったばかりでももつれてしまう。鏡で見ると緊張しているらしい新入りの侍女は、そんな厄介な髪を丁寧に丁寧にすいてくれている。つい、微笑んでいた自分に気付いた... -
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ギルドマスター
「だめだね、船を出すつもりはない。帰んな」(なるほど) 白い少女に連れて行かれたのは、船員ギルドだった。船員は同じ場所にとどまらない。そのために仕事を斡旋したり、情報を交換する場となっている場所である。はっきりと聞き取れないざわめきには、... -
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切れない絆
鋭く踏み込まれたが、ぎりぎりのところで受け止める。にやり、と、男は笑った。その余裕ある表情を見つめながら、アルセイドは必死に踏みとどまっていた。元々、自警団の一員に過ぎなかった自分である。軍務を長年続けてきた男ほどの技量があるはずなかっ... -
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呪い
ひと通り少女を診察した医師は、細い手首をシーツの下におさめた。難しい顔で離れた位置に立つアルセイドに向き直る。 「なんですかな、これは?」「なに?」 組んでいた腕を解いて、意外な感で応えたアルセイドだった。唇を引き結んだ初老の医師にからか... -
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霧深い都市
三日だ。生まれ育った街を出、隣町にたどりついてすでにそれだけの日数が経っている。なのにこの街の人間は何もしようとしない。 「……くそっ」 苛立ちを込めて、アルセイドは両手を窓にたたきつけた。じんと手のひらに痛みが響く。だがそれでも感情は収ま... -
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さいごの皇帝
かつて、人は天空に輝く星で暮らしていたのだという伝承がある。蒼く神秘的に輝く、その星の名はガイア。空を翔る船で、この大地セレネと行き来し、人は大いなる繁栄を享受していたのだという。だが、あるときをもってその交流は途絶えた。その理由には諸... -
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荒れた大地
ざああああ。 夕方から降り始めた雨は、いつの間にか、豪雨になっていたらしい。恵みの雨、と人は云うが、今の自分には災厄の雨だとアルセイドは感じた。あふれ出る血をさらに流させ、命をともす温もりを奪う雨だ。頬を叩きつけ流れていく雨粒がわずらわし... -
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時計
覚醒は突然だった。開いたそのまぶたに映るのは、漠然とした薄闇だった。はっきりと見分けられるものはない。少女はぼんやりと空を見つめる。その瞳には、まだ明確な意志は表れていない。白く長い髪を、同じく白い裸体に、ただ、まとわりつかせている。 や...