廃園遊戯– category –
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廃園遊戯
白い地図
「ごちそうさまでした」 綺麗に食器をからにした魔女が、きちんと手を合わせる。すると通りがかった店のおかみが朗らかに笑いだした。 「こちらこそ。おいしそうに食べてくれたねえ」「だって、事実、おいしかったのだぞ? おいしいものをおいしく食べる... -
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「光あれ」
なかなかにシュールな光景だった。 境界線のこちら側は緑あふれる草原、境界線のこちら側は何もない土くれの地面、空間の色すら違うのだ。こちら側は光あふれる昼で、あちら側は闇に近い夜が広がっている。ぎりぎりのはざまに立ち、その不可思議な風景を脳... -
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蜘蛛の糸
「派手な登場だのう」 苦笑と共にシュナール老が告げる。合わせるようにアルセイドも苦笑し、ふと羨ましげに若長を見上げているカイナを見た。そういうところはまだ子供らしい。 だが衝動を抑え込んでいるようなので、微笑ましく沈黙していた。背中を押し... -
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赤い屋根
ガイアより扉をくぐりぬけた先には、好奇心と心配とでいっぱいの顔が並んでいた。アルセイドたちが無事に帰ってきたことを知ると、わっと安堵の表情が広がる。アルセイドは魔女と顔を見合わせ、少しだけ微笑みあった。家族もいない2人だが、見知らぬ人の... -
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異人の踊り手
どこまでも続くかと思われた草原は、あっけないほど簡単に終わってしまった。初めて歩くガイアの地は、セレネとさほど変わらない。空気の臭いも、草や土の感触も、全く同じだ。歩く感触も違いはない。 ただ空には青い月がない。そのガイアに訪れているのだ... -
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大きな樹
集まっていた人々は、いざ若長が地上に降り立つと、わっと散った。それでいて好奇心を隠せない、といった様子で、おそるおそる物陰からこちらをうかがっている。 アルセイドは彼らの様子にかまわず、若長の背中から滑り降りて、橋が入った袋も地上に下ろし... -
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運命の女神
地上よりはるかに温度が低い上空を、竜の背中から感じている。アルセイドが乗っているのは竜族の若長の背中だが、他のレジスタンスはあれから集った竜族の背中に乗っているはずだ。人間が若長の背中に乗るなどと、と渋った竜族もいたが、若長が笑って快諾... -
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罪の記録
「まさかこのような形であなたに再会することになるとは思いませんでしたよ、ロクシアスさま」「それはわたしの言葉だ、イストール。あなたはとうに、宰相の地位から退いたと思っていた」 帝国皇帝アルテミシアが遁走した以上、帝国の代表は宰相たるイスト... -
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浮島
しゅこーと耳元で響く音がする。初めて身につける服はずいぶんごわごわしていて、アルセイドには動きづらいものとなった。正直なところを云えば脱ぎ去りたい。だがこれがなければ、アルセイドは命を失うという。 まるでレジスタンスの隠し場所がわかってい...