廃園遊戯– category –
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廃園遊戯
焚火
皇宮の外に出ることが出来た。見知らぬ街の屋台でものを食べることも出来た。満天の星空の下、野外で眠ることも出来た。 深呼吸をして、アルテミシアは青き月を見つめる。ガイア。人類が生まれ育った、かつての故郷。そして戻らなければならない故郷。振り... -
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自由
風にたなびく髪が煩わしくて、ひとつにまとめた。海の香りは、やはりかぐわしい。 魔女は今、レジスタンスの用意した船で竜族に会いに向かう途中だ。傍にアルセイドの姿はない。彼はドワーフの街に向かっている。かつて接触した場所を想ってだろう、あまり... -
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割れた卵
――その瞬間は唐突に訪れたのだ。 異変に最初に気付いたのは、セレネの全土を回っていた魔法使いである。食事の途中であった彼は、唐突に顔色を変え、立ち上がり部屋を出て行った。まわりの者はいぶかしげに顔を見合わせていたものの、やがて同様に血相を変... -
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亡霊
秘められた通路の向こうに、その部屋はあった。光源が足りぬ通路を、ミカドが先に立って歩く。繋がれたままの手をどこか頼もしく、どこかせつない想いでアルテミシアは見つめていた。扉の前に立ち、ミカドが所有していた剣で指を傷つける。ぷくりと浮かび... -
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盗賊と城
扉を開かれたのは、夜の化粧を済ませたあたりだった。アルテミシアは顔を上げ、自室に入室してくる警備兵に眉を寄せた。ただ、それは荒々しく入ってくる動作に対するもので、状況に対するものではない。落ち着き払って、ゆったりと立ち上がった。 「何事で... -
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賢者の石
「状況を整理しよう」 別室にアルセイドと魔女を引き連れた男は、しばらくの沈黙の後にそう切り出した。その口元を手の甲で押さえているのは、3人きりになった途端、魔女が蹴りを放ったからである。「拳じゃなくて足が来るか!?」とかなんとか男はぼやいてい... -
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故郷
――このセレネでは、どこに行っても、あの青き月ガイアが目に入る。まるであるべき故郷の存在を忘れさせないためのように。 「どうしても、行くのか」 出来るだけ気配を消したつもりのイストールは、突然背後からかけられた声に動きを止めていた。この数日、... -
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風見鶏
「失礼します」 声をかけて入室する。窓際で静かに本を読んでいた女主人は顔をあげ、『お疲れさま』と声をかけてくれた。ささやかな喜びを感じながら、マヤは云いつけられたお茶の用意を始めた。ふわりと香り高い茶の香りが漂うと、本から顔をあげて和んだ... -
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審判の日
「アルセイド!」 部屋に入るなり、わっという歓声が2人を包んだ。会議中なのだから後で入室する、という主張を押し切られたのだが思いがけない事態である。ここには各地のレジスタンスが集まっていると云ってもいい。どこかで見かけたような顔もあるし、...