廃園遊戯– category –
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廃園遊戯
嘆きの歌
ミカド元将軍の供として皇都に入る。今回は戦勝報告ではなく、ミカド・ヒロユキの実家に向かうという。 エミールは将軍の従者ではあったが、なんというか、ミカド・ヒロユキの強烈な兄たちによって、皇都に向かうこととなった。しばらくは戦地に出ることな... -
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王冠
その部屋に入るなり、だん、と、ミネルヴァは壁を拳で叩いた。部屋にいた人間の注意が一斉に彼女に向く。 中央にいた兄が目を細めて、妹の名前を呼んだ。まわりにいた人間が、2人を交互に見つめる。やがて1人、2人、とその場から立ち去った。最終的にそ... -
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自由市場
「グレイ?」 不思議と聞き馴染みのある声に呼びかけられ、ミカドは店先で検分していた果物から振り返った。顔色を変える。そこにいたのは数か月前まで彼の副官をしていたシーナだ。 にっこりと嬉しそうに微笑みかけられ、持っていた果物を取り上げられる... -
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死神
大したものだな、とアルセイドはあっけなく辿り着いたエルフの街で独りごちた。瞬時に場所を移動させるという「魔法」の道具をエルフの代表者から受け取っていたのだが、2度目の使用時には、拍子抜けするほどなめらかに空中を泳いだ。肩からイストールを... -
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醜い鳥
(すべてをおまえの思い通りにはさせない) 云われたばかりの言葉を反芻して、アルテミシアはふふ、と笑った。とすんと、椅子に腰かける。ともあれ、邪魔なイストールを追い払うことが出来た。今回の感謝はそれに対するものにしよう。 そう思いながら、ふ... -
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太陽と月
毒など入っておりませんからご安心くださいませ。 そう云われた薫り高い紅茶を飲みながら、アルセイドは戸惑いを隠せないでいる。テーブルの向こうに腰掛けるのは帝国皇帝アルテミシア。少なくともレジスタンスに所属するアルセイドにとっては不倶戴天の敵... -
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聖域
しゃああああん。クリスタルの時計は、ガラスとガラスをこすりあわせたような不可思議な音で時を知らせる。草むらに倒れ伏したまま、アルテミシアはその澄んだ音を聞いていた。その目元は赤く、頬には幾筋も流れた涙の跡がある。靴もストッキングも脱ぎ捨... -
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王子と姫
「――気に入らないネエ」 キセルをぶらぶら揺らしながら、女が呟くと、たしなめるような眼差しを男が向けた。2人が向かう先には、端麗な容姿をした兄妹がいる。竜族がゆったりと海岸から離れていくさまを見送る様子は、実に皇族らしい品の良さに満ちている... -
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二律背反
「魔女……!」 呼びかけてアルセイドは立ち上がろうとした。ところが慣れない態勢で腰掛けていたものだから、容易にそれは叶わない。 ふふ、と軽やかな笑声が響く。その声音通りに動き、そして手を差し伸べてきた魔女の腕を逆につかみ、抱きしめていた。 「...