廃園遊戯– category –
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廃園遊戯
来訪者
くつくつと沸騰した釜から、湯が一杯分すくいとられる。見たこともないカップに入れて、シャカシャカとかき混ぜたものを手渡された。まるで森の緑を切り取ったような茶である。先程食べたお菓子の甘さが口の中に残っているが、くい、とアルセイドは飲みほ... -
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エルフ
ここまであからさまな罪人扱いは初めてのような気がする、とアルセイドは内心呟いていたが、いや? と思い直した。他でもない帝国で囚人となっていたのだった。 いずれにせよ、この現状はアルセイドに焦りをもたらすものではない。それより珍しい木製の牢... -
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刺青
シーナは去り、男二人の旅となった。正直なところ味気ないと云うべきだろうが、アルセイドとしてはようやく安定した心地を取り戻している。やはり感情不安定な女性の様子は、こちらにも影響を及ぼしていたのだ。まったくの憂いがなくなったわけではないが... -
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天使の翼
「ちょっとよろしいでしょうか」 こわばった表情で声をかけられた時、アルセイドは、来たな、と思った。 3日前に恨み事を口にしてから、このシーナという女性は態度が一変した。それまでに存在していた、咎めるような態度が鳴りをひそめたのである。 正直... -
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精霊
かたん、と、吟遊詩人の手から盃が滑り落ちた。酔いが入った男が、お、と隣で声を漏らす。慌てて盃を取り上げたが、いち早く、その男は吟遊詩人の肩をたたいた。手加減なしにバンバンとだ、正直にいえば痛い。 「色男さんもよぉ、酒には弱いんだな」「そう... -
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はるかな地
さくさくと草地を踏む。頬を撫で、髪を乱していく風が心地よい。天空から降り注ぐ太陽はまばゆい光を投げかけている。 すうっと深く息を吸って、吐いた。胸一杯に新鮮な空気が入ってくる。頭の中まではっきりと明快になるようだ。 豊かな笑い声が響く。 「... -
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歌姫
ざわざわと抑えきれないざわめきが、「花の館」からこぼれていた。充分な広さをもつ飲み屋なのだが、今日ばかりは特別である。なにせ、あの歌姫マリアンデールが訪れ、歌うと云うのだから。 マリアンデールと云えば、このセレネにおいて知る者のいない歌姫... -
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黄昏
西日が部屋に差し込んでいた。すでに私室にあるアルテミシアは、沈黙のまま考えに沈んでいる。彼女は待っていたのだ。 やがて、特徴あるノックが成された。入室の許可を下し、入ってくる人物を見つめた。宰相イストール。白金色の髪をもつ父皇帝の忠臣。ド... -
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亡国の騎士
先帝である父が逝って、もう1年が経つのだ。舗装された道路を走る馬車の中から、アルテミシアは皇都の街並を眺めていた。 いま、彼女は皇宮を離れ、皇族の陵墓に向かっているところである。代々の皇帝が眠る陵、いずれアルテミシアも眠ることになるだろう...