NOVEL– category –
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廃園遊戯
天使の翼
「ちょっとよろしいでしょうか」 こわばった表情で声をかけられた時、アルセイドは、来たな、と思った。 3日前に恨み事を口にしてから、このシーナという女性は態度が一変した。それまでに存在していた、咎めるような態度が鳴りをひそめたのである。 正直... -
廃園遊戯
精霊
かたん、と、吟遊詩人の手から盃が滑り落ちた。酔いが入った男が、お、と隣で声を漏らす。慌てて盃を取り上げたが、いち早く、その男は吟遊詩人の肩をたたいた。手加減なしにバンバンとだ、正直にいえば痛い。 「色男さんもよぉ、酒には弱いんだな」「そう... -
廃園遊戯
はるかな地
さくさくと草地を踏む。頬を撫で、髪を乱していく風が心地よい。天空から降り注ぐ太陽はまばゆい光を投げかけている。 すうっと深く息を吸って、吐いた。胸一杯に新鮮な空気が入ってくる。頭の中まではっきりと明快になるようだ。 豊かな笑い声が響く。 「... -
廃園遊戯
歌姫
ざわざわと抑えきれないざわめきが、「花の館」からこぼれていた。充分な広さをもつ飲み屋なのだが、今日ばかりは特別である。なにせ、あの歌姫マリアンデールが訪れ、歌うと云うのだから。 マリアンデールと云えば、このセレネにおいて知る者のいない歌姫... -
廃園遊戯
黄昏
西日が部屋に差し込んでいた。すでに私室にあるアルテミシアは、沈黙のまま考えに沈んでいる。彼女は待っていたのだ。 やがて、特徴あるノックが成された。入室の許可を下し、入ってくる人物を見つめた。宰相イストール。白金色の髪をもつ父皇帝の忠臣。ド... -
廃園遊戯
亡国の騎士
先帝である父が逝って、もう1年が経つのだ。舗装された道路を走る馬車の中から、アルテミシアは皇都の街並を眺めていた。 いま、彼女は皇宮を離れ、皇族の陵墓に向かっているところである。代々の皇帝が眠る陵、いずれアルテミシアも眠ることになるだろう... -
廃園遊戯
遺跡
魔女と別れる際、簡単に遺跡の動かし方を教わった。複雑なものは教わることが出来なかったが、それでもドワーフと接触することは出来る。 かつて魔女と2人訪れた場所に、今度はひとりで立つ。連れの男女は、少し離れた位置からアルセイドを見守っていた。... -
廃園遊戯
荷馬車
がたがたとゆれる荷馬車から空を見上げる。気は急いているのだが、これが最も確実安全なルートと云われたものだから、アルセイドは自分を押しとどめている。 荷馬車と云ってもわらを運ぶに馬車であるがために、横たわっている背中がちくちくする。起き上が... -
廃園遊戯
マント
ふむ、と思案の鼻息が二重になって響いた。セイブル侯爵家双子の子息は、居間中に様々な布を広げて検討の最中だ。 とはいえ、色ははっきりしている。赤と青。ただ薄い色合いのものから濃い色合いのものまで、様々に取り集めているからこそ、居間の床が埋ま...
