NOVEL– category –
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茶道部のおもてなし
茶道部のおもてなし 序章
序章 午後から雨になると天気予報は言っていたけれど、転入試験を終えた乃梨子が私立苑樹学園中等部の校舎を出たとき、空はまだ青く晴れわたっていた。 あーあ、と思う。 (雨、降っちゃえばよかったのに) そうしたら、新しい家の庭掃除をサボって... -
365のお題
変。
「変なのです」 僕の執務室に飛び込んできた義妹は、開口一番、そう言った。 いつもならば「知ったことか」と追い返すところだけど、ちょうど昼食を終えたばかりの時間だった。執務に戻っていたものの、どこかまったりとした気分を切り替えたくて、僕は書... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
46 医師の指が僕の頭を辿る。先ほども受けた診察だ。指先にまとわり付かせた魔法が、僕の体内を探り、異常を探す。僕は瞼を閉じて大人しくしていた。ふう、と空気が揺れる音がしたから、目を開ける。同時に、医師の指が僕から離れた。 「先生?」「異常... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
45 僕は首を振って、貴公子を見返した。 「申し訳ありませんが、これも職務なので。僕を発見した経緯をうかがっても?」 貴公子は軽く苦笑を浮かべて、秘書どのを見た。 「そちらのものにも伝えたが、滞在している宿の女将の依頼でな。調理に必要な素... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
44 結論から言うと、僕の記憶喪失は外傷が絡むものではなかった。 医師がどこを診察しても、僕の肉体には損傷がない。ストレスも記憶喪失の原因になるというが、心当たりがない。にもかかわらず、おととい、仕事を終えた後から今日に至るまでの記憶が... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
43 ぽかりと目をあけたとき、僕は状況がわからなかった。 あれ、僕は何をしていたんだっけか。今、横になってる場所はわかる。ギルドの保健室だ。でも仕事を終えて帰宅したはずの僕が、どうしてこんな場所に横たわってるんだ。 指先が動くことを確認... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
42 「あなたは僕の記憶を封じるつもりなんですね。さっきの言葉は提案じゃなくて、通達だったわけだ」 貴公子は長いまつ毛を伏せて、でもすぐに僕を見返す。 「そうだ。そなたの生活を守るには、命を守るには、これがベストだ」「でもそうすることによっ... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
41 「さて、腹を満たしたところで、これからの話をしよう」 やがて食べ終えたとき、貴公子は食後のお茶と茶菓子を用意してくれた。 つくづくまめな人だと思う。 僕は遠慮せずに茶を飲み、茶菓子を食べた。ああ、この茶菓子、バターワッフルには発酵... -
宝箱集配人は忙しい。
宝箱集配人は忙しい。
40 出来上がったチーズリゾットは、とてもとても美味しいものだった。 米はちょうどいい加減に煮上がってきたし、チーズのとろみもコンソメの風味も申し分ない。僕の記憶でいちばん美味しいチーズリゾットは、亡くなった母親が作っていたものだけど、...
