NOVEL– category –
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365のお題
尻尾
二学年の学年主任は、厳しい生活指導で有名だ。 通常、そういう教師は、生徒たちから煙たがれる。だけれども、彼は数少ない例外だと言えよう。それというのも。 ぴょこ。 (動いてる)(動いてるよ……)(今日も動いている) 学年主任の担当科目は化学であ... -
365のお題
ごちそう
深い森の奥に、行ってはいけないよ。ごちそうを用意した悪い魔女が、子供を捕まえようと待ち構えているから。 「なんて話を聞いたよなあ、兄弟」「聞いたわよネエ、そう聞いて育ったのよネエあたし達」 くつくつと泡が出ているスープをかき混ぜながら弟が... -
365のお題
新しい靴
靴の内側が剥がれてきたから、さすがに捨てて、新しい靴を買った。とは言っても、そんなに目新しいデザインじゃない。黒いパンプス。 面白みのないチョイスだけど、無難な選択でいいのだ。だって毎日履くものなんだもの。奇抜なデザインだと、合わせる服に... -
365のお題
アイスクリーム
コンビニアイスって侮れないと思うのだ。 少しむかしだと、コンビニデザートは少々割高で味は微妙、という印象があったと思う。でもこのごろのコンビニデザート、特にコンビニアイスは侮れない。有名どころのアイスに味は引けを取らないし、お値段もお手頃... -
365のお題
NO
---------------約束など、覚えていないのでしょう。 「息災か」「陛下こそ」 たったそれだけだ。夫たる国王と交わした言葉は。なんてそっけない。自分でもそう感じているし、夫もそう感じているとわかっている。 けれども他に言葉など見当たらない。見つ... -
365のお題
YES
-------------約束を、覚えているか。 この時代、王の仕事とは存外つまらないものだ。議会によって決議された書類に、王の名前で印を押す。そんなものだ。 はるかな昔、それこそ英雄譚に登場する時代であれば、能動的な仕事は多かっただろう。けれどもいく... -
国盗物語
急になにもかもは変わらないようです。
そもそも非常事態だからといって、空腹を我慢し過ぎた判断がまずかったのだ。 きゅるきゅる、とお腹が軽い音を立てた。思わず赤面した。すぐそばにいるひとに聞こえただろうか、と思えば、羞恥のあまり、動き出すこともできない。ちいさな間を置... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (6)
森の入り口、馬を止めたところまでゆっくりと歩いてきたが、結局、マティアスが追いついてくることはなかった。意識体の前から立ち去る際、ちらりと確認したときには、片膝を立てた状態で座り込んで動き出さないままだったから、絶望なりなんなりしたの... -
国盗物語
いつかまた。再会を希う心に、資格など無粋です。 (5)
幻聴だと、まず考えた。 幻聴とは形を変えた自分の声だ。あの子に許してほしいと願っている自分の一部分が、あの子の声を借りて応えたのだと考えた。 けれどなぜか、マティアスが身動いた。キーラに背中を向けて、進んでいた先へと向き...
