宝箱集配人は忙しい。– category –
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宝箱集配人は忙しい。
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60 「室長さん」 勇者の呼びかけに、僕はゆっくりと振り返った。 そうして見つけた勇者一行の表情はさまざまだ。驚愕に疑惑に困惑。だが勇者だけは僕を思いやる表情を浮かべている。視界の隅で、宿屋の娘さんがぺたりと床に座りこむ様を見届けながら、... -
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59 「ここまでだな」 貴公子はそう言って、席から立ち上がる。 え、と僕がそんな貴公子をふり仰ごうとしたところ、走り寄ってきた剣士が、僕を椅子ごと抱え込んで、後ずさる。そうして、できた隙間に、勇者が入り込み、貴公子に向けて、鞘に入れたまま... -
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58 マサラチャイをすすっていた唇を、カップから離して、僕は貴公子を見た。 貴公子は静かな横顔を僕に見せて、マサラチャイの入ってるカップを見下ろしている。僕の驚きに気付いただろうに、揺らがない横顔は微笑んでいるようにも見えた。 ぐるぐる... -
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57 なにかを初めて経験する人からしか、味わえない旨みがある。 たとえば、いま、隣に座っている貴公子から、僕は微笑ましさを感じ取っている。スパイスたっぷりの煮込み料理をスプーンですくい、そろそろと口に運んだ貴公子が咀嚼し、飲み込んで瞳を... -
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56 秋の夜は、暮れるのが早い。 だからなのか、すれ違う人々も、ちょっとばかり早足だ。少し肌寒くなってきたなとも思いながら、僕も足早に、貴公子が滞在している宿屋に向かう。 「あら、室長さん」 宿屋に到着すると、ちょうど外の灯りを調整しよ... -
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55 「これからどう動くつもりじゃ?」 今度こそ副ギルド長が沈黙すると、代わりにギルド長が口を開いた。 僕はほほ笑んだ。 「とりあえず、お世話になった友人にはお礼をするものでしょう。これから夕食に誘うつもりです。探りの気配に敏感そうな相手... -
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54 さて、滞りなく今日の業務は終わった。 僕はいそいそと職場を出た。部下たちが「おつかれさまでした」と見送ってくれる。「残業しないようにね」と僕は言い残しておいた。まあ、秘書どのがまだ残るようだし、あとは任せても大丈夫だろう。 そうし... -
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53 ふう、と、息を吐く。 なにげなく扉を開ければいいんだ。いつも通りに振る舞えばいいんだ、と言い聞かせてから扉を叩く。そのまま扉を開けると、いつも通りの光景が広がっていた。 すなわち、部下たちが事務作業をしている光景だ。 「室長!」「... -
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52 「おや、室長さん」 たどり着いた食堂には、もうほとんど人はいなかった。 さっき、鐘が十四個鳴っていたんだ。食堂のおばちゃんは、いつもの注文口ではなく、がらんとしている食堂のテーブルを拭いていた。 やばい、と思ったね。もしかしたらも...
