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茶道部のおもてなし 第三章
【(2)】 幼い子供の声だ。少なくともこの学園に通うような年齢の声ではない。 乃梨子は海斗と顔を見合わせた。お互いの表情で、いまの声が聞き間違いではないと確信した。じゃあ、どこから聞こえてきた、と考えながら首を動かすと、海斗が「いてっ... -
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茶道部のおもてなし 第三章
【(1)】 茶道で教わった内容は、実はどこでも実践できる。 箸を持ち上げるとき、お茶を飲むとき、学校や家の廊下を歩くとき。だから乃梨子は機会を逃さずに、ましろさまから教わった内容を練習し続けた。自宅に帰宅したら帰宅したで、茶会の動画を... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(8)】 「次のお茶会は、五月の第二水曜日に行います」 次の部活動の日、学園長室から戻ってきた若菜がキリリとした表情で言った。 乃梨子が日曜日に購入した道具を部員たちに見せて、「へえ、かっこいいな」とか「猫の扇子って珍しいね」という感... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(7)】 百貨店でけっこうな時間をとられたから、気づけばもう、お昼どきだ。 話し合いをするまでもなく、二人は足早に近くのファーストフード店に向かう。二人とも五百円で買えるセットを選んで、ギリギリ空いている席に座った。いそいで良かった... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(6)】 一週間はあっという間に過ぎて、日曜日を迎えた。 昨夜は雨だったから、どうなるかと思ったけれど、清々しく晴れてくれた。跳ねるようにベッドから起き上がって、パジャマから服を着替える。今日はストライプのブラウスに黒いワンピースを... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(5)】 結衣と別れて帰宅したところ、まだ母親は帰っていなかった。 (今日も残業なのかな) 台所には味噌汁が作ってあったし、タイマーがセットされた炊飯器ではほかほかのごはんが炊き上がっている。冷蔵庫を開けば、ラップをされた豚の生姜焼き... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(4)】 結衣と並んで電車に座ったとき、ほうっと息を吐き出してしまった。 結衣が小さく笑う。 「乃梨子ちゃん、おつかれさま」「いやいや、奈元さんこそおつかれさま。すごいね、あんなになめらかに動けるなんて」 乃梨子が畳の上での歩きかた... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(3)】 まもなくふすまが開いて、ましろさまが現れた。 今日も羽織姿で、なぜか菜の花の束を抱えてきている。ゆるりと微笑んだ。 「待たせてすまぬ。菜の花が盛りだったからな、持ってきた。今日はこの花を飾ろう」 乃梨子はさわやかな黄色に惹か... -
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茶道部のおもてなし 第二章
【(2)】 「うん、そうだよ。学園長が茶道部の顧問なの」 ようやく待ちに待った、茶道部部活動の時間だ。 結衣と一緒に和室に移動したところ、まだ、だれもいなかった。だから職員室から鍵を借りて、和室の鍵を開けて二人になったところで、乃梨子は...