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茶道部のおもてなし 第二章
【(1)】 新しい学校での新しい生活は、まあまあ楽しい。 普通の授業が始まって、心配だった授業にはなんとかついていける。体育は相変わらず苦手だけど、大好きな歴史の授業は面白い先生だったから、余計に嬉しかった。 「ようやくお昼だ。お腹空い... -
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茶道部のおもてなし 第一章
【(6)】 「茶道部に入った?」 乃梨子が帰宅してからまもなく、母親も帰宅してきて夕食の支度を始めた。 なんとなく気分がソワソワしていたから、その隣に立って手伝う。野菜を洗い始めた乃梨子に「あら、ありがと」と言いながら驚いた様子の母親に... -
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茶道部のおもてなし 第一章
【(5)】 せわしなく動く部員たちが、茶席の用意をしている。 乃梨子はどうしたものか、戸惑う。学内の食堂で昼食も終えたいまでは、さすがに帰宅しようとは思わない。だがこのままぼーっと過ごすのは、気がとがめる。気づいた結衣が手招きしてくれ... -
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茶道部のおもてなし 第一章
【(4)】 「三年C組、部長の岸本若菜です」「三年B組、高橋翔太です」「三年A組、高橋隼人です」 初めて会う三人は、次々と名乗りをあげて「ようこそ茶道部へっ」と言った。声が見事にそろっている。その勢いに押されて、乃梨子も「中村乃梨子です」と... -
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茶道部のおもてなし 第一章
【(3)】 「そっか、同じ電車で帰れるんだね」 教室を出て昇降口に向かいながら、自然な流れでお互いの最寄駅を打ち明けた。 嬉しそうに笑う結衣に対し、乃梨子はちょっとばかり気まずい。なぜなら今朝、結衣と同じ電車に乗っていた事実を打ち明けそ... -
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茶道部のおもてなし 第一章
【(2)】 「中村乃梨子さんね? 担任になる渡辺薫です。よろしく」 学校に着き、あらかじめ案内された通りに職員室に向かえば、セミロングの女教師が乃梨子を待っていた。スラリと背が高く、白いシャツにベージュのスーツを合わせている。きれいなひ... -
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茶道部のおもてなし 第一章
【(1)】 (やだ、最悪) 朝起きて、二階の自室から洗面所に降りてきた乃梨子は、鏡を見て前髪が寝癖ではねていることに気づいてしまった。きっちり眉毛で切り揃えてるから、余計に寝癖が目立つ。あわてて水で濡らし、ヘアアイロンを使ってみた。それ... -
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茶道部のおもてなし 序章
【序章】 午後から雨になると天気予報は言っていたけれど、転入試験を終えた乃梨子が私立苑樹学園中等部の校舎を出たとき、空はまだ青く晴れわたっていた。 あーあ、と思う。 (雨、降っちゃえばよかったのに) そうしたら、新しい家の庭掃除をサボ... -
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変。
「変なのです」 僕の執務室に飛び込んできた義妹は、開口一番、そう言った。 いつもならば「知ったことか」と追い返すところだけど、ちょうど昼食を終えたばかりの時間だった。執務に戻っていたものの、どこかまったりとした気分を切り替えたくて、僕は書...